好転反応とは?
「好転反応」とは東洋医学で使われる言葉で、漢方薬や鍼灸マッサージなどで治療する過程で体に生じる一時的な症状のことを言います。瞑眩(めんげん)反応とも言い、症状が良い方へ転ずる時に起こる一時的な身体の不調のことをいいます。
慢性的に疲労していた筋肉がほぐれることで大量の老廃物が血液中に流れることが原因と考えられています。症状は、1つだけでなく複数現れることもあります。鍼(はり)治療や整体などの自然治療を受けた翌日に、健康を取り戻す過程で、体にだるいなどの疲れや痛み、発熱などの症状が現れることがあります。
また、誰でも必ず感じる症状ということではなく、症状の度合いや期間には個人差があります。治療をすることで、今まで滞っていたリンパや酸素の流れが良くなり、一気に毒素や老廃物が身体中を駆け巡ることで、好転反応の症状が起きるようになります。例えば、腰のヘルニア治療のためにマッサージをし、治療を受けた翌日に熱を発症したり、骨盤の急激な痛みなどを感じるようになります。
このような症状は回復の前の予兆、好転反応と言われ、2〜3日ほど経てばすっかり良くなるといわれています。つまり、好転反応の症状がおきるのは回復の証だといわれています。症状が我慢できないほど辛い場合は、医師に相談しましょう。
※ただし、厚生労働省は好転反応には科学的根拠がないと明示しています。そのため、2〜3日経っても症状が治らなかったり、症状がさらに悪化したりする場合にはすぐに医療機関に行くようにしましょう。
施術後に現れる反応例
- 喉が渇く
- 不調だった部分の症状が出てくる
- 痛みが解消、もしくは緩和される場合がある
- 食欲が出る
- 排便、排尿の回数が増加し、量も増え、色も濃く、臭いが強くなる
- ゲップやオナラが出る
- 発汗量の増加
- 熱が出る
- 寒気がする
- 睡眠の質が深くなる
- 睡眠の質が良くなる
- 肌の張りが良くなる
- 吹き出物が出る
- 身体の力が抜けた様になる(脱力感)
- 前向きになったり憂鬱になる等の感情的、心理的変化が現れる
その他にも人によって様々な効果が現れますが、それらの反応は施術をした事により自然治癒力が高まり、身体が前向きに何かしらの不調を克服しようとしている為の好転反応と考えられています。もし、施術後に特に気になる異常な諸事‘情が出た場合は、専門医による診断を受けてもらって下さい。
持病を持っている方で普段から薬を服用している方はだるさが出やすい傾向があります。薬で抑制され、回復しないうちに施術を受ける事により症状が出る場合もあります。 そこに自然治癒力の働きが加わるとだるさや眠気も出てきやすくなります。
好転反応と病気を見分けるポイント
好転反応の症状は病気の症状と似ていることもありますが、中には病気と見分けられるものもあります。次のような場合は、好転反応の症状と考えられます。
①不調な状態と並行して、良くなる症状も確認できる場合
不調な状態や不快な症状と並行するタイミングで、良くなっていると感じる症状も出ていれば、それは好転反応の症状の可能性が高いです。例えば、「湿疹が出ている一方で、便通が良くなった」「足の痛みは改善しないが、食欲は出てきた」など。
②我慢できる軽度の不調や不快感の場合
下痢や頭痛など病気と同じような症状であっても、好転反応の場合、その症状は比較的軽度であることが多いです。例えば、「下痢のような症状は見られるが、腹痛は殆どない」「広範囲に湿疹ができたが、皮膚に痛みもかゆみもない」など。
※不調な状態ばかりが続く、我慢できないほど辛い、といったときは、他の病気の可能性もあります。「もう少し様子を見よう」など自己判断せずに、すぐに医師の判断をあおぎましょう。
好転反応の4つの段階
症状は4段階を経て回復
好転反応の症状は回復までに4つのステップがあり、それぞれで症状が異なります。それぞれの段階では体の中で何が起こっているのか、そしてそのときどういった症状なのかを把握しておきましょう。
なお、4つのステップすべての症状が治まるまでの期間や、各ステップで感じる症状の度合いには個人差がありますが、多くの場合は1日から数日で治まります。1段階で要する期間は長くても3日間までと見て、もし3日間経っても次のステップに移行する様子が感じられない場合は、医師に相談しましょう。
【第一段階】弛緩反応
<特徴>
マッサージや整体を受けた時に筋肉がほぐれることで、縮まっていた筋肉に今まで溜まっていた毒素や老廃物などが、巡回することを弛緩反応といいます。
毒素や老廃物が流れ込み、巡回している時に今まで機能していなかった器官などが毒素や老廃物に対応できず、急激な倦怠感、熱を発症するようになります。今まで調子が悪かっ身体の部位が、本来の機能を回復しはじめる最初の段階です。
体は、初めて受ける施術や薬などの刺激に反応します。体の機能や自律神経などが、アンバランスな状態からバランスのとれた状態に戻ろうと動き出している時期といわれています。
<症状>
急激な倦怠感、疲れ、だるい、眠い、発熱
<対策>
急激な倦怠感や疲れが出た時は体を横にして休むようにしましょう。寝る前に、コップ一杯分の水分を取ると排毒の効果が高まるため、オススメです。
※弛緩反応かなと思う時はカフェインやアルコールを摂取するのは避けるようにしましょう。発熱が続くのであれば、すぐに病院に行くようにしましょう。
【第二段階】過敏反応
<特徴>
過敏反応は治療した箇所が治療したのにもかかわらず、痛みやかゆみ、炎症などを起こすといわれています。
過敏反応が起こる原因は治療した箇所に血液が流れ込んで、体中の壊れた組織を作り変えようとしているためです。慢性的に不調だった体の機能が覚醒し、体の状態は、慢性の前の急性状態にまで戻ります。
複数の部位の具合が悪い時は、まずは最も状態が悪い部位の反応が出て、そこが治り始めると、次に状態が悪い部位の反応が出始める、という点も特徴です。そのため、具合の悪いところや痛みが移動するような感覚にもなるとされています。
<症状>
体全体の痛み、かゆみ、汗をかく。治療した箇所の炎症、便秘、下痢、はれ、など
<対策>
急激な痛みや炎症が出た時は体を横にして休むようにしましょう。それでも痛みや炎症などが消えない時は病院へ足を運ぶようにしましょう。
【第三段階】排泄反応
<特徴>
排泄反応は体に溜まった毒素や老廃物を体外に排出しようという動きのことです。汗、尿、便、皮膚に反応が現れるといわれています。細胞が活性化されることで体の解毒作用が表れ、老廃物や疲労要素などの分解・排泄機能が活発化されます。
<症状>
吹き出物、発疹、ニキビ、肌荒れ、目やに、尿の色が濃くなる、下痢が起きるなど
<対策>
排泄反応かなと思った時はできるだけ多く水分を取るようにしましょう。水分を大量に取ることで体外に老廃物や毒素を運び出す運動を促してくれます。
また下痢などによって、水分が体外に運ばれるため、脱水症状を引き起こす可能性もあることに留意しましょう。具合が悪いのが続くようであれば、すぐに病院へ行きましょう。
【第四段階】回復反応
<特徴>
回復反応は今まで、血行の悪かった所が改善され、うっ血していた(血液が止まっていた)汚れた血液が一時的にめぐり始める時にあらわれることで起こる症状といわれています。
血流が促進されることで、新陳代謝が進んで、正常な機能を持った体に生まれ変わるイメージです。この時期を乗り越えることで、体調は元の正常な体に戻っていくでしょう。
<症状>
発熱、吐き気、腹痛、だるさ、痛み、動悸、女性の場合は悪血(おけつ)
<対策>
回復反応かなと思った時は体を横に休めて安静の状態にしましょう。2〜3日経てば良くなると言われている回復反応ですが、万が一2〜3日経ってもよくならない場合はすぐに病院に行くようにしてください。
辛い症状をやわらげる4つの方法
好転反応の症状が見られたときは、体の循環やバランスを促す対処方法を心掛けましょう。好転反応自体に体の循環やバランスを改善させようとする働きかけがあるので、そこをさらにサポートすることで、よりスムーズな回復が期待できるからです。
好転反応の症状を感じたら、すぐにでも対処できることが4つあります。難しいことはありませんので、体調に合わせてできることから行ってみてください。
水分をたくさん摂る
常温の水やぬるま湯、お茶などを飲んで、体内の老廃物を排出する循環を促しましょう。
横になる、休む
発熱、だるさなどを感じるときには、無理をせずに体を横にしてゆっくり休みましょう。
運動をする
いつもよりも少し多めに、ストレッチやウォーキングなどの運動を取り入れます。動くことで体の循環を促して、老廃物を排出しやすい体に近づけます。
※だるさや発熱があるときの運動は控えましょう。
自己判断で我慢しすぎるのは禁物
不快ばかりが続く症状や、我慢できないほど辛い症状を、専門家以外の人が好転反応かどうかと見極めることは非常に難しいです。症状が辛いと感じたら、我慢せずに医師に相談しましょう。好転反応は、東洋医学において実際に起こる症状として認められています。
また、消費者庁の報告書(平成26年)では、美容商品や健康商品を利用して症状が発生した後も継続使用を勧められて、その結果、健康被害が発生した、という相談が339件寄せられたデータがあります。
このとき商品を利用した人は、美容商品や健康商品を購入した会社から「それは好転反応」「今は毒素が抜けているところ」などの説明をされ、症状を我慢してしまったという事例もあるのです。もし、薬の服用や施術の後に体に何かしらの不調が認められて、その症状に変化が見られず、我慢できないほど辛いときには、無理をせずに医師に相談して他の対処方法を考えることも大切です。
まとめ
好転反応は、体内の循環や神経のバランスなどが元に戻ろうとする過程で起こる、一時的な身体反応です。4つのステップを踏む中でだるさや痛みなどのさまざまな症状を感じながら、循環のよいバランスのとれた状態に回復していきます。
中には辛い症状もあるので、そういったときには、循環を促しながらゆっくり適度の運動と休息をとって、回復を待ちましょう。
注意事項
前述したように好転反応には医学的、科学的根拠はありません。そのため、もしも好転反応かなと思っていた症状が2〜3日長引いても回復しないようであれば、すぐに医療機関に行くようにしましょう。
「好転反応かも」と思って回復するだろうと期待し、2〜3日以上症状を放置しておくことは危険です。好転反応はあくまで根拠のないものなので、症状が重い場合、2〜3日経過しても一向に症状が良くならない場合にはすぐに医療機関に行くようにしましょう。